Uber のカラニックCEOの休職・500 StartupsのマクルーアCEOの離職にみる、シリコンバレーのセクハラ問題

不祥事が相次いだUberのCEOカラニック氏。

ちょうど何ヶ月か前にニューヨークタイムズで彼の特集を読みましたが、その記事で彼は「会社のビジネスのためなら手段を厭わない、早熟な経営者」といったイメージで描かれていました。

そして今回の休職。Uber内部の問題がこんなに相次いで表面化したきっかけは、Uber の元女性社員が社内のハラスメントを告発したブログ記事でした。

私も読みましたが、ちょっと読んでいて吐き気がするような社内環境でした。マネージャーによるセクハラ・パワハラが横行し(妻とセックスができないから誰かを探している、と社内チャットで上司に言われるなど)、それを告発するとクビにするぞと脅され、人事やCTOに報告をしても全く対応なし、それどころか「問題があると私たちに言ってくるあなたこそが問題だ」と言われたそうです。彼女は一年でやめました。入社時、彼女の部署の女性社員は25%でしたが、嫌気がさしてやめる人が続出し、一年後には3%になっていたそうです。

このブログ記事をきっかけにツイッターなどのSNSでUberの内部環境を告発する元社員が続出、どんどんメディアにも取り上げられたため、会社の経営の危機だと判断した役員会によりカラニック氏の休職を要求することが決定したようです。

法律を無視して新しい都市への事業拡大をするなど、強引な手段で会社を成長させてきたUber。今回の件がビジネスを見直すきっかけになるのでしょうか。

この相次ぐハラスメント告発の波にのり、ニューヨークタイムズでは6月30日に、テック業界で働く12人の女性によるハラスメント被害の実情を語る記事が出ました。この記事を見る限り、問題はtech業界よりもベンチャーキャピタリスト、つまり資金を援助する側の問題が大きいようにみえますが、この状況下ではテック業界全体が「人間を尊重できない」とみられてしまいかねない状況になってしまいました。

そして同じ日に、シード投資ファンドである 500 Startupsの創立者、デイビッド・マクルーア氏も女性に対するハラスメントを長年続けてきたことが明るみに出て、CEOを辞職しました。自身が投資した先のスタートアップの女性起業者に不適切な発言や行動をしたことが次々と分かり、500 Startupsへの批判が高まる中、ツイッターで自らCEOの座を降りることを報告した形になりました。

企業文化の重要さ

タイトルでシリコンバレーと言ってしまいましたが、詳しく見ていくと、シリコンバレーの中でも特に投資ファンド側の問題が大きいように見受けられます。ウルフ・オブ・ウォールストリートのようなイメージなのでしょうか。いやまさか。でも。詳しくは私には分かりませんが、権力とお金を持った男性(投資家)が、そのお金を必要とする女性(起業家)にハラスメントをする構図は、どこの社会でも似ているような気がします。

翻ってテック業界は、一概にセクハラが横行するというのは違うと私は考えています。ではどうなっているのか。まだシリコンバレーで働いたことこそないので実体験に基づいたわけではないのですが、一応スタートアップを立ち上げ、Y Combinatorに応募したり、Tech Crunchやスタートアップ関連のメディアを読んだりしてきた浅い経験なりに考えると、それぞれの会社の企業文化によるところが大きいのではないかと私は考えます。シリコンバレーは新しい企業が乱立しているため、どこも企業文化が定まっておらず、したがって文化を重視する会社であればあるほど全米でも有数の働きやすい会社に成長し、逆にそこを放置してビジネスのみを追求すればするほど全米でも最悪の労働環境になってしまう、そんな傾向があるように思います。FacebookやAirBnBは前者、Uberは残念ながら後者だったのではないでしょうか。

ビジネスに特化したソーシャルメディアのLinkedIn創立者、リード・ホフマン氏によるポッドキャストの最新話でも、カラニック氏の休職を取り上げ「とにかく文化が大切だ。絶対に文化を軽んじてはならない、さもなくばUberのようなことになってしまう」と若い起業家にアドバイスしていました。

女性エンジニアを増やそう

でも「文化」の一言でセクシュアル・ハラスメントを片付けられるのも納得がいかない、と個人的には思います。日本でもアメリカでも、きっと他のどの国でも、男性による女性へのハラスメントは起こっています。(もちろん、女性による男性へのハラスメントも大きな問題です。)地球はまだまだ男女平等とは言えないと思います。

原因は様々ですが、一つには働く女性の数が男性より少なく、より出世しにくいシステムになっているから、ということが挙げられると思います。

テック業界に限っていえば、ハラスメントが起こりやすい環境の土壌として、業界全体をみた時に男性が圧倒的に多いということは看過できないと思います。これはもう事実です。日本でも、例えば東大の理一はほぼ男子学生であることから見られるように、テクニカルな業界というのはまだまだ男性が多数で、必然的にマイノリティとなる女性の立ち位置が弱くなりがちだと思います。まだまだ男女平等とは言えない21世紀社会で、こんなに男性が多い環境においては、企業の積極的な努力がセクシュアルハラスメントを防ぐには必須なのではないでしょうか。努力が必要なこと自体がとても残念ですが。

もろ違法のハラスメントではなくても、女性だからというだけでエンジニアではなく受付嬢だと思われた、投資家と会話をしているといつも話をさえぎられて男性の共同創立者に話を振られる、などの話はごまんとあります。

この状況を受けて、Women in Technology InternationalGirls Who Codeなど、女性エンジニアを支援する団体や活動が近年では盛んになってきました。まだ小さい女の子に理系の勉強の楽しさを教えるところから、少しずつ変わっていくといいなと思います。

まとめ

今回のハラスメント告発の波は、テック業界に大きな衝撃をもたらしました。こんなに次から次へと出てくるということは、まさか内部者がそれを知らなかったということはありえないと思います。特に業界で働く女性たち。言い出したくても、相手が出資者だから、CEOだから、上司だから、言ったら次がないから、沈黙を強いられてきた女性たちがぽつりぽつりと真実を、ツイート一つ一つから語り始めました。

私もテック業界で働くことを志望している一人の女性として、相次ぐニュースは衝撃的だったし、本当にこの業界に入りたいのか少し考えたりもしました。元々志望していた出版業界はほぼ80%が女性という統計があり、インターン先の出版会社に至っては100%が女性社員だっただけに。でもやはりこれからの未来を率いていく業界なのだから、これをきっかけにテックを諦めるのは違うと思いました。完全な会社はきっとないし、完全な業界もきっとありません。(一例として、米国の出版業界は80%近くが白人という統計が出ています。アジア人の私はどちらにしろマイノリティになってしまいます。)Uberだって、カリフォルニアに来て、見知らぬ土地で引越しをしなければいけなかった私の大きな助けになってくれました。今回の告発もFacebookやTwitterを通して行われましたし、投資ファンドがなかったらそれらの会社が存在することもできません。技術を通して社会を変えていく業界だからこそ、技術のみに偏らず、人間を大事にするような業界になるといいな、とテック業界への就職を志望する新卒としては思います。